欠損の美学。

f:id:mirefugio:20210121190558j:plain


音が
天に舞上がる。


はじめて
この人のピアノを聴いた時


あまりの
衝撃に


レコード屋のお兄さんの
手をつかんで


これ誰の演奏ですか?
と、聞いたのを


今でも
憶えている。



音に
まるで羽が生えたみたいに
演奏が空間にひろがってゆく。


弾いているのは
小さなフランス人のおじさんで


うまれつきの
病気だったらしい。






でも
その音は


躍動感に
満ちていて


人生を
いとおしんでいるような



開放感が
いっぱいに広がっている。



生まれながらにしての
欠損を魅力に変えてゆく


その
営みの結果が
この人の演奏だとしたら


それは
あんまりにも


うつくしくて
かけがえのない
美学として



わたしたちの
心に刻まれ


反芻され続けてゆく。


Michel Petrucciani『solo LIVE』