のりへいちゃん。

その
おじさんが
はじめて店に入ってきたとき


びっくりした。


お父さんに
似ている(笑)



背格好、顔。



とにかく
びっくりした。





私のお父さんは
店に来たことがない。



恥ずかしいのか
何なのかわからないが


来たことがない。




はたらく後ろ姿。


スーツをきて
仕事にゆく。


その厳しいうしろ姿が
わたしにとっての
父のすべて。




不器用な人ほど
愛情というものを
何かにたくす。


それは
父がわたしたちのために建てた
家であり


そして
いま、生きている
私自身に宿っている。



あまったるい愛情は
一切注がれた記憶はない。






ところが
最近来るようになった
おじさんは


ニコニコよく笑い


わたしのことを
のりへいちゃん。


と呼び


お菓子をくれたり
果物をくれたりする。





不思議だ。


血縁をこえて
うまってゆく
たりないところ。



満たされてゆく
きもちにきがつく。



わたしが生まれたときにすでに
おじいちゃんはいなかった。


もしかしたら
わたしがじいさんたちに
やさしくしたくなるのも
このせいかもしれない。




いろんなかたちが
あっていい。


ひととひとが
つながるっておもしろい。