風のように。

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お花屋さんに
並ぶ花が苦手です。


人間が
飾るために育て


首をちょん切って


きれい
きれい


なんて


下品で
あんまり
好きじゃない。





地に根を張って


すーっと伸びた
野の花のように


凛として
控えめで
うつくしい。


女の人も
そんな人が好き。


声が
風みたい。


シュガーベイブで唄う
大貫妙子さんを見て


そう
思いました。


頬を撫ぜるような
髪をふわりと揺らすような


透明なチカラ。


力強く優しい心から 
吹く風。


欲張らず
がんばらず
そのままの自分で


咲くこと。


私も
年を重ねても
おばさんにならず


あなたみたいに
可憐な野の花のように
魅力的でいたいな。


大貫妙子『note』





 

あこがれの人。

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あこがれの女性は?



聞かれたら


向田邦子。と。
答える。


つよくて
頭よくて
やさしくて
うつくしくて。


でも


不倫して
癌になって


飛行機事故で
死んじゃった。



この人のことを
考えるたび。


ほんとうの幸福とは
何か  


ほんとうのうつくしさとは
何か



わからなくなる。
 


わからないと
知りたくなる。


わからないと
気になってしまう。



よく見ると
そんな美人でも
ないのだけれど





どの写真も
吸い込まれそうになるくらい


目が
表情が
魅力的なのである。



向田和子『向田邦子の青春』

しあわせということ。

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福福と
ふくらんだ身体を
ゆらして


かわいい
おじさんが


隠れ家の扉を開けた。


只者ではないな。



すぐ感じたが


まあ
よくあることなので
ふつうに接客をする。



帰り際に


僕、本のデザインしてるんだ。
と、言って


死んだ
わたしの親友の本を
買ってくれた。




それ以来
道で会うと


近寄ってきてくれて
ずっと友だちだった人みたいに
話しかけてきてくれていた。




本というものは
装丁がうつくしければ
中身と関係なく欲しくなるものだ。


うつくしい本は
それを所有する人を
しあわせにする。




坂川さんが
死んじゃった。



聴いたのは


最後に会って
しばらくしてからだった。


本人自身の
見た目が


福福とした
装丁をしたおじさんだったから


おじさんを思い出すだけで
しあわせな気持ちになってしまい



なんだか
まったく
涙がでない。


隠れ家の中にある
坂川さんが装丁した本たちも


佇まい
うつくしく


しあわせそうに
そこに
存在している。


歩いて10分の
坂川事務所で回顧展が
開催されている。



坂川さんが死んだことを
たしかめにゆくことも
できるのだけれど


たしかめないほうが
しあわせな気がして


行かないでいる。

本日の1冊

本の顔
坂川栄治+坂川事務所

千年後のわたしたちへ。

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疫病が流行って
人間が減っていっています。


あした


わたしも
消えてゆくかもしれないし


百年後には


跡形もなく
わたしは消えているのだと
思っています。


千年後の
わたしたちへ


残せるものは
なんでしょうか。


それは
存在するための


地球という
生命の営みだけです。


はたして
わたしたちは


信じてやまない
科学技術やお金で



森や大地や海や空を
つくれるのでしょうか。



この物語に
描かれる千年後のトーキョーには
ヒトがほとんどいません。


そこに
トーキョーがあり
ヒトが何人かいて。


ただ
それだけだけど。


不思議と
千年後のトーキョーは
永遠につづいてゆくような


調和に満ちた
安心感がひろがっています。

  

寺山修司
人間の病気は希望だと
言いました。


調和を乱すほどの
希望が


わたしたちの
生命の源を
壊していることに


わたしたちは
はたして


気がつくことができる日が
くるのでしょうか?

本日の1冊

川上弘美『おめでとう』

意識の魔法。

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同じかたちの
そまつな家でも


思い出や記憶が
宿っている家


ていねいに
愛されている家


が、纏う
ゆたかさ。



記憶と心根を
さがして


みつけてゆく
育んでゆく
うつくしい暮らしは


家に宿り


家がまとう
満たされた表情は


ふれあい
連鎖して



ひとが人として
ゆたかに生きてゆく
うつくしさを



私たちに
おしえてくれるのだと
思うのです。




目に見える価値や
集団心理から


ぬけだして。


ものに価値をあたえるのは
いつも


自分自身の心根。



身の回りにある
すべてのものを宝物にするのも


ゴミにするのも


ひとりの人間の
意識の問題なんだなあ。


ものはいつだって
やさしくて。


私たちにこたえて
よりそってくれている。



さあ。
わたしも。



粗末なエプロンも
ちいさな店も
宝物に変えてゆく。


人間の意識は
魔法なのだ。


バージニア・リー・バートン
『ちいさいおうち』

人間の内面に潜む自分。

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自慢じゃないけど


わたしは
苦労もしたし
貧乏もしたし
孤独にも耐えてきた。


でも
全然


それを
哀しいことだとは
思っていなくて


そんな人生を
歩むきっかけを
つくってくれた人々を


こころから
愛しているし
感謝している。


どん底を知ると
いうことは


人生から
恐怖がなくなるということで


実に
清々しく
晴れ晴れとした


きもちで
今を生きている。


そして最近は
年をとることの豊かさも


日に日に
感じているのである。





カルメンマキさんの唄を
聴くたびに


あんまりにも
きれいな魂に触れて


ドキドキする。


歌手として
人生を生きぬくことは


並大抵の努力では
できないはずなのに


なんで
一点の曇もなく
こんなに透明感があるのだろうか。



圧倒される。


そして
クルクルと表情を替えてゆく
マキさんの魅力に見惚れてしまう。



ペルソナ
とは


人間の内面に潜む自分



いう意味。




わたしも

わたしの内面に潜む
自分を探してゆく毎日に


発見の期待で
胸はふくらむ。


年をとればとるほど
研ぎ澄まされて
透明感とうつくしさが増してゆくような



つよく
たくましい
生き方が出来たらと



このアルバムを聴くたびに
思っているのです。

本日の1枚

カルメン・マキ『ペルソナ』

あなたの知らない世界。

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古い喫茶店
入る時の


時空が
歪む感じが好き。


自分が
経験したはずのない


時代の扉を
開くようで
ワクワクして


同時に
胸の奥底に
ツンとなつかしいような


苦しいような
胸の痛みを感じる。


この
不思議な痛みが
癖になってしまって


私の
喫茶狂いが
はじまってしまった。


ある一定の
法則をもって


この痛みは
音楽や空間、風、光などにも
感じられる。


自然と
涙がこぼれるような


無条件にすべてに
愛されているような


安心感にも似た
この感覚を再現したくて


わたしは
お店を始めたのかも
しれません。


2002年に
新宿のタワーレコード


このCDを聴いた時


お店のイメージがするする
湧いてきて


蓄音機やランプ
町並みや細い路地


ゆらゆらゆれる
珈琲カップからの湯気までが
思い浮かびました。


この世界で
暮らしたい。


経験したはずもない
時代の空気、音、声、肌触り


それは
戦前の音楽だけど


私にとっては
未来の自分が暮らす世界への
扉となりました。



戦前のSPレコード
コンピレーション。


選曲は
ノアルイス·マーロンタイツ。


私にとっては
最高にお洒落でピースフルな世界。


イメージできる



夢は
叶うんだよなあ。


と。


お店でこのアルバムを
かけるたびに


不思議な気持ちに
なるのです。


今日の1枚

sweetest,music this side of heaven carefully compiled
by NOAHLEWIS'MAHLON TAITS