あかい色。
こどもの頃
父の部屋にこっそり入って
若い父の中国旅行の写真を
見たことがある
あんまりにも
広大で
荒々しい
その風景に
剥き出しの生命力を
感じて
私のいる世界とちがって
生と死とが接近しているようで
ちょっと
恐いな。
と
いう印象をもった。
夕焼け空。
あかい色。
それは太陽の色
血液の色
ふたつに割った
ザクロの色。
この絵本をひらくと
突然
夕陽のあかに
こころを奪われる。
チョウ専門の昆虫学者が
中国西部に
かつて
生きていた
チョウの王女さまの足跡を
みつけにゆく物語。
剥き出しの
したたり落ちるような
かなしい あか。
1日のおわり
1年のおわり
一生のおわり
いつだって
おわる瞬間の
煌めきは
うつくしくて
かなしい。
終わりから辿る
生の気配。
中国の大自然に
暮れてゆく夕陽。
終わることの
豊かな美しさ
目一杯
伝わってくる
うつくしい絵本。
📕今日の一冊
イザベル・シムレール
『シルクロードのあかい空』