つよく、やさしく。

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お店を
はじめてからの
10年は


記憶喪失になったみたいに


わたしは
感受性をうしない


こころを
未来と希望に傾けていた。


好きな本を
ひらく余裕も


時間の美しさを
感じる余力も


うしなって
得た


未来のわたしは。


10年前の
わたしよりも
つよく、たくましく
年をとっていて。



身の回りには
削ぎ落とされて
ほんとうに必要なものだけが
存在している。


ずっと
この人の文章が
好きだった。




ひさしぶりに
この人の世界の扉をひらく。


ことばの
旋律とリズムが



よりふかく
よりしみじみと


からだに
染みわたってゆくのを
感じる。


やっぱり
この人の文章が好き。


わたしの
本質は変わっていない。




記憶喪失になって
駆け抜けた
10年間は


無駄じゃなかったんだね。




うつくしいものを
もっと
うつくしく


感じられる
こころ。


空間にただよう気配や
微細な音に慈しみを感じられる
時間のゆたかさ。


取り戻してゆけば


きっと
この世界は
天国になるはずだ。



生きれば
生きるほど


つよく
やさしく
たくましくなれる。


そして
人の本質は変わらない。




年をとるって
たのしい。


豊かで味わい深い
すばらしいことなんだよな。