おつかれさまの
ビール。
ミロンガで
はたらいていたころから
大好きだった。
アンカースチーム。
このビールの
香りをかぐと
神保町の
あの路地を
思い出す。
浴びるように
お酒を呑んで
あの頃も
わたしは懸命に
ふがいない
自分とたたかっていた。
階段をのぼると
そこは
お酒を呑むことも
ゆるされないほど
たいへんな
世界だった。
でも
たまにはやく
終わったら
この匂いを
かぎたくなる。
ああ
おいしい。
と
思いながら
初心にかえる。
どうしようもなく
何ももってない
貧乏少女だった
あの頃の自分を
わすれないように。