夜に。
いつもは
と、言って
別れていた彼女が
そのときだけは
さようなら。
と、言った。
昭和のはじめ
関屋敏子さんという
歌手がいた。
生きてる
と
死んでる
の
ちょうどあいだ。
かなしいような
せつないような
声。
人間は
生まれたら
死にむかって
歩きだす。
日々が
過ぎていくということは
そういうことだ。
死ぬ
と
いうことは
わるいことでも
かなしいことでも
ないんじゃないかな。
ただ
終わった。
ということ。
自分で終わらすことも
なにかによって
終わらされてしまうことも
終わった。
と
いう事実には
変わらない。
ただ
彼女の生きた証しを
今、生きているわたしが
聴いている。
ということが
なんだか
じーんとくる。
わたしは好きだなあ。