今日という日。


今日
亡くなった人がいる。


その人は
ピアノの先生で
肌の色がとっても白くて
うつくしい
ひとだった。


そのうつくしいひとは
一度も結婚をせず
亡くなった。


亡くなる前に
何度か会いに行った時


その人は
かわいらしい仕草で
私の手を握りながら


純子ちゃんは
私のようになったら
いかんよ。



何度も言った。


どんな人生を
歩んできたのだろう。


真っ白な肌をした
うつくしい女の人の
人生が終わった。


そのことだけしか
私には
わからない。


ただ
透きとおるような
肌のむこう側にある


その人の大切な記憶に
思いをはせるくらいしか


できることは
ないのである。


今日は
とてもあたたかくて
春の香りがする日だった。


今日という日。


そして
明日という日はまた


何事もなかったように


やってくるのです。