福の神。

雨の水曜日。


お店が暇なので
あやこちゃんとふたり


蓮根の酢漬けや蓮根肉味噌
果実酒、珈琲酒の仕込み
ケーキを焼いたり


おしゃべりをしながら
たのしく
過ごしていた。


お客さまは
ふたり。


のんびり
おだやかな
雨の午後のはずだった。



隠れ家のドアが開いた。


お客さまだと
思い


いらっしゃいませ
と、言った。


そのお客さまは
なんだか
ギラギラしていた。


エネルギーが
みなぎっている感じ。


おもむろに
そのお客さまがコートを
脱ぐと。


そのお客さまは


いい国つくろう
キャバクラ幕府。


と背中に書いてある
ジャージを着ていた。


ちいさな店に
ただよう
なんとも言えない雰囲気。


奥の席にすわっている
お姉さんが
ちいさく笑っている。


キャバクラ幕府の
お客さまは
私に
いろんなことを
話しかけてくれた。


昼のごはんは
どんなものですか?とか
定休日とか。


普通の会話だった。


勇気を振り絞って


イカシタジャージですね。


と、言ってみたけど
あんまり反応はなかった。


そのお客さまは
黒ラベルの大瓶を
ものすごい速さで飲んだ。


そして
お会計を済ませて
帰っていった。


また来ます!
と、言っていた。


なんか
びっくりしたけど
滑稽で
不可思議な20分間だった。


その5分後から
いきなり
お客さまが
たくさんいらっしゃって
店内はパンパンになった。


みんな
ごはんをおいしいといって
隠れ家を
たのしんでくれるかたばかり。


たくさんたくさん
きてくれた。


キャバクラ幕府の方は
福の神だったのか。


あの出来事は
なんだったんだ!?


生きていると
おもしろいことが
たくさんありますね。


あー
たのしい(笑)