寒い日の夜は
お店はちょっと暇です(笑)


そんな時に
蓄音機が聴きたいという
お客さまが
いらっしゃったので
久しぶりに
蓄音機をかけてみました。


半世紀以上前の
男性歌手の歌うオペラの一曲。


空間に浮き上がるような音。


静かな夜には
蓄音機の音がよく似合う。


蓄音機をかけるたび
磨耗してゆくレコードの
命が削れてゆくのを
感じます。


今日より
いい音は明日は出ない。


かけるたびに
命は減ってゆく。


一年前
わたしが
涙を流したレコードは
今は削れてしまって
同じ感動を
私に与えてくれないのです。


蓄音機に触れるたび
ふと感じる
過ぎていく日々や
残りの日々。


限りがあるということを
知る。という体験。


たいせつな音楽がある
ということは
失うというせつなさを
知ることによって
より深まる。


半世紀前に生きた
演奏家や歌い手が
浮き上がる
そして愛し、愛でるほどに
消えてゆく。



蓄音機って
不思議だ。