月夜とめがね。

めにみえるもの
みえないもの


それはすべて


わたしたちの
記憶とつながっていて。





みんな
ほんとうの意味を
さがしたがるけど



ほんとうなんてものは
わたしたちの記憶のなかにも。




どこにもないんだと
思うのです。





「月夜とめがね」


小川未明
高橋和枝


あすなろ書房




眼鏡越しに見る空は
本当の空ではなく


眼鏡越しの空。







月夜にあらわれた
めがね売り。


美しい女の子。


きれいな一つのこちょう。


月のきれいな春の夜のこと。





視覚、聴覚、嗅覚、触覚


そして
こころに響く


感覚。



淡い、やわらかい。


絵の世界と



小川未明さんの


うつくしい
日本のことば。







「みんなお休み、どれわたしも寝よう」
と、おばあさんはいって、
家の中へ入ってゆきました。


ほんとうに、いい月夜でした。







このさいごのことばに
たくされたやわらかな祈り。





生きているということは
感じる、ということ。



こころのまわりの
すべてをいとおしむこと。


うけいれて
あいすること。




おだやかな夜の香りと
あたたかな余韻をのこす。






すばらしい絵本です。