ぞろ目の日。

よっぱらいのじいさんは
何度も、言う。


あの世にもっていけるのは
経験だけ。


金も、家も、名誉も。


なんにももっていけないよ。







「ラ・タ・タ・タム」

  • ちいさな機関車の不思議な物語-


ぺーター・ニクル 文
ビネッテ・シュレーダー

矢川澄子






ちびでちっぽけな
マチアスのつくった機関車。


離ればなれになるふたり。


まっしろだった機関車は
まっくろになりながら


とにかく。


マチアスに会いたくて
すすむ。


さまざまな不安に
おびやかされながら


雨に打たれながら
まっしろにもどって


とにかく
前にすすみます。


この物語には
終わりがなくて。



のぼったり。おりたり。


とにかくずっと。


きっと今も。


走りつづけている。







生きていると
いろいろなことがある。


いつだって。


闇と光は
となりあわせで。



泣いたり、とがめあったり
愛しあったり、なぐさめあったり
わかれたり、くっついたり。



それでも。


ひとは
ひとのもつ


ちからを信じたいと
願いながら。




日々を生きぬいて
ゆくのだと


思うのです。





どろんこになったって
怪我をしたって


いいんだよ。



僕を信じて。





マチアスは
ちいさな機関車に


生きることの意味を
おしえるために


機関車をつくったのかも
しれません。