登る夢。

ずっと。


茶店
はたらいてきた。





そのあいだに
何人ものお客さまが
亡くなっていった。





戦後のごたごたの中


一生懸命はたらいて。


お客さまがあつめた
たくさんのレコードたち。






目を閉じて。


聴き惚れる。


音楽に
陶酔してゆく。


おじいさん。
おばあさん。





ものがなかったから。


かも
しれない。



おじいさん。おばあさん。は


わたしたちよりも。


目には見えない
音楽を
たいせつにしている。













亡くなる前に。




たからものをくれる。



何度も
聞き惚れた音楽。



たいせつな
思い出と一緒に。


段ボールに詰めて。



いただく
たくさんのレコード。






たからものを
あげる。





さあ
わたしはだれに。


この
たからものを
わけようかな。


音楽喫茶をやりたかったのは。


この
たからものを
たくさんのひとに
わけたかったからなのかも。


しれないな。






1月のおわりに。


またひとり。


「かなしむな。
往生するだけだ。」


といって。



夢が空に。


登ってゆきました。



よく笑う
笑顔のかわいいおじいさん。



だいすきだったなあ。













生きてるうちに。


しっかりと。



みんなの夢とたからもの。



わけられるように
なりたいな。




さあさあ。
今日も。