ぞろ目の日。

白い猫のぬいぐるみに
ものすごく。


執着する
こどもだった。


ボブ。


と名前をつけていた。


ある日
美容院の駐車場で
ボブを落とした。


雨の降る日。


わたしとお母さんは
近くのごみ箱やマンションのごみ捨て場を
探し回った。


あたらしいものじゃ
だめなんだ。


汚くても
ボロボロでも。


ボブじゃなきゃ
いやなんだ。



こどもごころに
自分を呪い、泣きわめき


こころの底から
かなしかったことを


今でも
おぼえている。








先日。


ずっと行きたかった
茶店に行った。


ていねいに、ていねいに
つくられた空間とお菓子。


あたたかな珈琲。


そして
偶然に手に取ったこの絵本。


なんだか
胸がいっぱいになって


わすれていた
ボブのことを思い出した。







ビロードのうさぎ


マージェリィ・W・ビアンコ/原作
酒井駒子/絵・抄訳


ブロンズ新社




こどもは親から
あたえられる愛を知るけれど


あたえる愛を知るのは
おもちゃなのかもしれない。





こどもは自分の残酷さや
愛情、執着、喪失感。



おもちゃを通して
いろんなことを知る。




そこには
ちゃんと


人生の縮図がある。





大人になって
実家の自分の部屋を出る
片付けをしているとき


1枚の便箋を見つけた。



汚い、つたない字で




「ボブを探してきます。
心配しないでください。」




書いてあった(笑)


んー。


こどもの純粋なきもち。



ものすごく。




つよいちからをひめている。