おくれたぞろ目。

「大きな木」


少年のために
大きな木は
すべてを
うしなってゆきます。


それでも
木はしあわせでした。


切り株だけになった
木には


「ぼくと木」


という
しるしだけが
のこっています。






じぶんをつかって
だれかを
しあわせにすることと


だれかをつかって
じぶんを
しあわせにすること



この絵本に
描かれていることを


うつくしく解釈するのは
かんたんです。





しかし
村上春樹さんの
新訳によって


浮き彫りになる
作者の意図。




何がほしいのか
わからないままに
欲望に翻弄される
滑稽な人間


被害者で
いつづけようと
無償の愛をささげたがる
偽善者



くりかえされる
空虚な人間関係



これじゃ
だれもしあわせじゃ
ないよね。



もっと
成熟した
大きな愛を
探しませんか?



これから
未来へ羽ばたく
こどもたちに


意志を持って
生きてほしい。


という
作者のメッセージが
こめられた



うつくしい絵本。





意志をもって
自らのぞんで
愛するという行為。


愛をあたえつづける側を
意志を持たない
木にしたことにも
作者の意図が伺えます。






能動的に
あたえつづけることを
こわがらず


人間同士
自らの意志により
愛しあうことができたなら


木とぼくのような
結果には
ならないはずだよ。





そういうこと
なんじゃないかなあ。





思ったら


こころに灯りが
ポッとともったような


あったかい
きもちになりました。





作者が紡いだことばが
わたしたちの
こころの鏡ならば


あなたは
どんな印象を
この絵本に抱くのでしょうか?



研ぎ澄まされた
表現。


読み手の想像力によって
かたちを変えてゆく。


すばらしい
作品です。




シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein


あすなろ書房



「大きな木」




店主風邪気味でして(涙)
ぞろ目に間に合わず!


おくればせながら
ひとりでぞろ目の日。