階段をのぼる。

mirefugio2014-09-18

北村くんの演奏を
はじめて聴いたのは
もう10年以上前のこと。


タンゴ喫茶で
アルバイトをはじめたばかりの
わたしはまだ本当に子どもで。


同じ年の
男の子の弾くバンドネオン
ただ、ただ
あんぐりと口を空けて聴き
世の中には
すごい人がいるものなんだ。
ということを
知ったのでした。


それから月日がたって。


去年の冬。


不可能プログラムに
挑戦しますよ。


と、ニヤリと笑いながら
教えてくれました。



9月16日。
オペラシティ。
バッハからコンテンボラリーへ。


バンドネオン
北村聡


いろいろなものを
乗りこえたあとの
清々しい
おだやかな世界。


たどり着いた人しか
見えない世界って
きっと
あるんだろうな。


音楽を聴くってことは
その震えを受けとることで。


あたたかいような
きびしいような
ここちよい
うつくしい世界。


ひとつひとつの曲を
あー
終わらないでほしい。


って
本当に何度も思いました。


たくさんのお客さまの前で
余裕の堂々たる笑顔。


鳴りやまない拍手。


世の中には
立派な人が
いるもんだ!


と、また
思うのでした。



バッハって
本当にいたのだろうか?
と、思うことがある。


天国へつづく
階段をのぼるような
音。


グールドが弾くバッハも
北村くんが弾くバッハも


人間じゃないものに
近づいて行くような
おそろしいような
そのまま吸い込まれて
消えてしまいたいような。


そんなきもちになる。


バッハが本当にいたのなら
人間だったのなら。


バッハも
おなかがすいたりしたのかな。
作曲の間に
パンを食べたり
トイレに行ったり
そうじやせんたくをしたり
したのだろうか?


同じ人間なのだとしたら
私は本当に努力が足りない
人間なのだろうか。


人間って
どこまでゆける可能性が
あるんだろうか。


それは
努力によって
得られるものなのだろうか。


考えあぐねる
木曜日。


ロンの窓からは
2014年の朝日が
さしこんでいます。


私の隠れ家は
本日、定休日です。


工事をしている間を
待つ喫茶店


午前10時。


四谷の町は
緑にあふれて
うつくしく


ロンでは
いつものビートルズ
流れています。


さあ今日も
すべての人に
平等な一日が
はじまります。