足るを知る。

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呑み屋街の3階に
住んでいる。


訳あって
ほとんど人にも会わず


2ヶ月
部屋に籠もっている。


こんなに
のんびりと
時間を過ごしたのは


20年ぶりだ。


最低限の食べ物と
本と音楽と携帯電話。


生活が
幸福で満ちている。


ゆるゆると
流れてゆく町の音を
聴きながら


自分の心臓の鼓動で
時間を感じる。


人の中に居たり
人と暮らしていると


自分自身の輪郭が
見えづらくなる。


ひとりっきりで
みつけた
幸福の感覚は


案外
あっけないほど


ちいさくて
深い深いものだった。


毎晩
天国で眠りにつくような


そんなキモチで
生きている。

記憶。

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父とは
あまり
話したことがない。


毎日
規則正しく


仕事に行く
背中


家にいる時は
本を読み
音楽を聴いている。


基本的な記憶は
後ろ姿だけである。


1度だけ
ふたりで出掛けた
記憶がある。


夏の日に
電車に乗って
映画を観に行った。


はじめて
父の横顔を
近くで見たような


気がするなあ。



小学生の私は
思った記憶がある。



刻まれたその記憶は
その後


起こる
私の家族の
たくさんの出来事の序章として


物語の根幹を形作ってゆく。


観た
映画は


紅の豚


なぜ
父が私に
あの映画を見せたかったのか。



それが
解っちゃうようになるまで
大人になってしまった私は


父に会うのが
苦しいくらい


父に感謝と敬意を
抱いている。


父と母のこどもに
生まれて


ふたりの紡ぐ七転八倒
物語を見ることができて


たくさんの感情を
知ることが
出来た。


しあわせに生きることだけが
生きる目的じゃないよね。


格好良くありたいと
願うこころを
忘れない大人の格好良さ。


私の父ちゃんは
かっこいい。


いやあ
最高に格好良い大人に
出会ってしまうと


なかなか
現世での
恋が出来ない。


小学生のあの時から
ジーナの歌が好き。


そして
シャンソンの世界へ
深く深く
潜るほど


狂おしいほどの
うつくしい世界を知り


また
なかなか
恋が出来なくなってしまうのです。



加藤登紀子
シャントゥーズTOKIKO
仏蘭西情歌〜

自立について。

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日本は
アメリカに
守ってもらって


平和を
維持している。



いうことは


日本が
攻められた時には



日本の兵士は
戦争には行かないけれど


アメリカの兵士が
日本を守るために
代わりに戦争へ行って
戦うことになる。


自国の子どもを守るために
他国の子どもは死んでもよい



いうことなのだろうか?


日本国憲法
第九条がうつくしい憲法
だとしたら


うつくしいって
こういうことなんだろうか?



それか
どんな理不尽な理由で
日本が攻められても


わたしたちは
受け身で、非暴力ということ。


すすんで
いのちを差し出しなさい。



いうことなんだろうか?



自立した
個人として


尊厳を持って
生きる哲学を
持つための


根幹が
歪んでいるような
気がしてならない。


何が正解か
わからないまま


時間が過ぎてゆき


話し合うことも
出来ぬまま


私は
目の前でおこる


茶番劇を冷めたこころで
眺めながら


死んでゆくのだろうか。



最近は


ぼんやり
考えている。

花森安治
一銭五厘の旗』

重ねる記憶。

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作為なく

  
うつくしく
生きてゆきたいな。



思っています。



飾りたてたり
塗りたくったり
選抜したり
執着せずに


自然であれたらと。


そうしたら


自然と
優しい柔らかい
うつくしさが


醸造されてくるのでしょう。


お店をはじめて
10年経った


私の隠れ家のルームツアーの動画が
出来上がりました。


ん〜
なかなかよい焼きあがり。


へんてこなものも
うつくしいものも
みんなひとしくそこにある。


わたしの理想郷。



https://youtube.com/c/%E5%96%AB%E8%8C%B6%E6%96%87%E5%8C%96%E5%AD%A6%E9%99%A2-KissaBunkaGakuin

秘めごと。

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二十歳すぎで
神保町のタンゴ喫茶に
恋をした。


ただ
ただ
そのお店が好きで
近づきたくて


アルゼンチンタンゴ
という音楽に


深く深く
のめり込むことになる。


浴びるように
タンゴを聴き


古いレコードを集め


蓄音機まで買った。


あれから
20年がたって


恋は冷め


やっと
冷静にアルゼンチンタンゴ
聴けるようになってきた。


あらためて
聴くと


ずいぶんと
尖った美意識をもった
音楽であり


ずいぶんと
乱れた感情を振り回す
音楽だなあ。



思う。


でも
それが。


人間らしくて
愛おしい音楽。


ただ
もうやっぱり
疲れてしまうから


最近は
あんまり
聴けないでいる。


もう
無邪気に
恋は出来ないくらい


私は
欠乏感を
失っているのだ。


ただ
この一枚は別物で。


大貫妙子さんの
抑制の効いた表現が


上手くアルゼンチンタンゴ
抱いているような
安定感。


秘める
うつくしさ。


情熱の
チラリズム


大人のための
和製タンゴの美意識としては


これが
いちばんなんじゃないかな。


うつくし。




大貫妙子小松亮太
Tint

茶のある小道。

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お茶をのむ



いう行為の中に


日常の美を
見出すことを


仕事にしたいと
願う人が


この世界にいることが


私の
希望の光です。
  




神楽坂の路地裏に
このお店をみつけた時


このお店が
音楽レーベルをつくっていると
知った時


なんだか
ものすごく


夢のある仕事を
みせてもらえたみたいで


この世界も
捨てたもんじゃないなあ。



思ったのを
憶えています。





仕事が
社会をつくり


社会が
仕事をうみだす。




社会との調和した
均整のとれた


うつくしい
律動。

 
日本的
バランス感覚。



お茶をのむことは
夢をみることに


似ているから


芸術にも
ちゃんと


繋がっているのです。



社会がうつくしくなるように
うつくしい仕事をするひとが


たくさん
たくさん
ふえますように。

saryo's collection vol.6
Shun Someya Plays

欠損の美学。

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音が
天に舞上がる。


はじめて
この人のピアノを聴いた時


あまりの
衝撃に


レコード屋のお兄さんの
手をつかんで


これ誰の演奏ですか?
と、聞いたのを


今でも
憶えている。



音に
まるで羽が生えたみたいに
演奏が空間にひろがってゆく。


弾いているのは
小さなフランス人のおじさんで


うまれつきの
病気だったらしい。






でも
その音は


躍動感に
満ちていて


人生を
いとおしんでいるような



開放感が
いっぱいに広がっている。



生まれながらにしての
欠損を魅力に変えてゆく


その
営みの結果が
この人の演奏だとしたら


それは
あんまりにも


うつくしくて
かけがえのない
美学として



わたしたちの
心に刻まれ


反芻され続けてゆく。


Michel Petrucciani『solo LIVE』